懸濁剤
塩ビ懸濁重合とPVOHの役割
塩ビ懸濁重合の分散安定剤として水溶性高分子が使用されていますが、その中でも重合度、ケン化度などにより塩化ビニルモノマー(VCM)への界面活性能を広範囲に制御できることから、各種PVOHが使用されています。
塩ビ懸濁重合は、塩化ビニルモノマーを攪拌と分散剤によって水に懸濁し、数時間重合することで粒子径50~200μのポリ塩化ビニル(PVC)を製造する技術です。製造されたポリ塩化ビニルの粒子径、粒子形状、嵩比重等の粉体特性は重合中の粒子形成過程によって変化します。
ポリ塩化ビニルの粉体特性を左右する粒子形成過程におけるPVOHの役割は、非常に大きく、ポリ塩化ビニルの粉体特性の5~8割は、PVOHによって支配されます。
昨今では塩ビ懸濁重合時の除熱能力の向上により高速重合化が進んでおり、ポリ塩化ビニルの残留塩ビモノマーの抜け性等を損なうことなく、生産性と環境の両面に対応出来るPVOHが求められています。
このような市場のさまざまなご要望に応えるべく、当社では独自の技術で開発した種々の界面活性能を有する塩ビ懸濁重合用分散剤(1次分散剤、2次分散剤)を揃えております。
PVOHの役割
重合初期(塩ビ重合率10%以下)の一次分散剤としてのPVOHは、VCM液滴を分散させ、合一・再分散を活発化させます。また、二次分散剤としてのPVOHは、合一・再分散をより活発化させます。
重合中期以降(塩ビ重合率30%以上)の一次分散剤としてのPVOHは、適度な二次凝集抑制を行います。
以下の写真は、PVCの懸濁重合粒子の断面写真です。
下図は、1次分散剤について品種、ケン化度、粘度、特徴を示したものです。
品種 | ケン化度 (mol %) | 粘度*1 (mPa・s) | 特徵 |
GH-22 | 86.5~89.0 | 45~52 | 高BD用 |
GH-20 | 86.5~89.0 | 40~46 | |
GH-17R | 86.5~89.0 | 27~33 | |
KH-20 | 78.5~81.5 | 44~52 | 重合安定性 良 |
KH-17 | 78.5~81.5 | 32~38 |
*1: 4%水溶液、20℃
下図は、2次分散剤について品種、ケン化度、粘度、特徴を示したものです。
品種 | 製品形態 | ケン化度 (mol %) | 粘度*1 (mPa・s) | 特徵 |
LW-100 | 39~41% 水溶液 | 39.0~46.0 | 500~2,500 | ポロシティの均一性を向上 |
*1:39~41%水溶液を25℃で測定
塩ビ懸濁用PVOHは、PVOH重合度の高低と塩ビ粒子の特性で下図のように分類できます。