実はこんなところにも？木工用 接着剤に使用されるポリビニルアルコールのご紹介

木材などを貼り合わせるための接着剤の代表的な例として、以下のようなものがあります。

「溶媒揮発型」

接着剤を塗った後に乾燥させて溶媒を蒸発させ、流動性がなくなることで硬化します。常温でも乾燥できるので手軽に使用できます。水を溶媒としたものはエマルジョンと呼ばれ、毒性が低く安全性に優れています。木工用や建材の接着剤として使用されます。酢酸ビニル樹脂エマルジョンが代表的です。

「熱硬化型」

接着剤を塗った後に加熱することで接着剤成分の化学反応を起こし、樹脂を架橋させることで硬化します。硬化させるために通常高温での加熱工程が必要ですが、硬化後の接着剤は耐水性や耐久性に優れます。合板や構造用接着剤などに使用されます。フェノール樹脂や尿素樹脂、メラミン樹脂などが代表的です。

木工細工用の接着剤としては、酢酸ビニル樹脂エマルジョンの接着剤が広く使われています。安全性が高く取り扱いが容易で、製造が比較的簡単なためです。酢酸ビニル樹脂エマルジョンの工業的な製造方法としては、乳化重合法が一般的に用いられています。乳化剤（ポリビニルアルコール）や重合開始剤を含んだ水に酢酸ビニルモノマーを分散させ、加温して重合反応させることで、酢酸ビニル樹脂の微粒子が水中に分散した乳白色の液体、エマルジョンが得られます。

ポリビニルアルコール(PVOH,PVA）は、酢酸ビニルの乳化重合時の乳化剤および保護コロイドとして一般的に使用されます。ポリビニルアルコール(PVOH,PVA）を使用することで次のような優れた効果が得られます。酢酸ビニルの乳化重合における乳化剤としての利用とその特徴は以下の通りです。

ポリビニルアルコール(PVOH,PVA）の優れた界面活性能を活かして酢酸ビニルモノマーを水中に微分散させ、安定な重合反応が実現できます。

ポリビニルアルコール(PVOH,PVA）は酢酸ビニル樹脂エマルションの保護コロイドとして非常に有用です。ポリビニルアルコール(PVOH,PVA）は重合反応中に酢酸ビニルとグラフト化し、化学的に結合します。このポリビニルアルコール(PVOH,PVA）は酢酸ビニル樹脂の油滴のまわりに配向することで、厚く強靭な、水和ポリビニルアルコール層（保護コロイド層）を形成します。これが油滴の保護層として働くことで、エマルジョンが低温に置かれた時や強い機械的せん断が加えられた場合にも、油滴同士の融着を抑制することができ、安定性の高いエマルジョンを得ることができます。

乾燥後のエマルジョン被膜の中にポリビニルアルコール(PVOH,PVA）が介在することで、水素結合により凝集力が向上し、高強度の被膜が得られます。

親水性の高いポリビニルアルコール(PVOH,PVA）が酢酸ビニル樹脂油滴の表面に存在することによって、紙やセルロース繊維など親水性基材への接着性が向上します。

木工用接着剤として普及している酢酸ビニル樹脂エマルジョンですが、耐水性に課題があるため構造用接着剤などの耐水性・耐久性が要求される用途での使用は限定的です。一方で、この用途で従来使用されている、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂は、シックハウス症候群の原因物質とも言われるホルムアルデヒドを含むなどの課題を抱えており、酢酸ビニル樹脂エマルションの耐水性向上を望む声が多くなっています。

ゴーセネックス™Ｚは、三菱ケミカル株式会社が提供する分子内に反応性に優れたアセトアセチル基を有する特殊変性PVOHです。変性基を導入することで、一般のポリビニルアルコール(PVOH,PVA）にはない機能を発揮します。アセトアセチル基の導入による耐水性に加え、水酸基、酢酸基、アセトアセチル基量の調整により、 反応性や耐溶剤性、界面活性能かをコントロールすることができます。

三菱ケミカルのゴーセネックス™Ｚについては以下をご覧ください。