顕色剤の効果を高める分散性の高いポリビニルアルコール(PVOH)とは? フェノールフリー顕色剤にも対応した製品も紹介

ポリビニルアルコール(PVOH)は、水溶性の合成ポリマーであり、さまざまな産業用途に広く使用されています。その優れた特性の一つが「分散性」であり、これはPVOHが多様な分野で活用される重要な要素です。この記事では、PVOHの分散性に焦点を当て、その特性、影響要因、および応用について詳しく説明します。また、感熱紙顕色剤の分散剤・バインダーとしての役割についても触れます。さらに、GOHSENX™Lの分散性についても紹介し、フェノールフリーの顕色剤のトレンドについても説明します。

感熱紙の顕色剤の分散剤・バインダーとしてのPVOH

感熱紙は、熱を加えることで色が変わる特殊な紙で、レシートやラベルなどに広く使用されています。この仕組みの中核を担うのが、発色層に含まれる顕色剤です。顕色剤は、熱によってロイコ染料と化学反応を起こし、色を発現させる役割を果たします。

感熱紙が発色する仕組みについて詳細はこちらをご覧ください。

 

分散剤・バインダーとしてのPVOHの特性

顕色剤の効果を最大限に引き出すためには、その分散性が重要です。PVOHは、顕色剤の分散剤・バインダーとして使用され、ロイコ染料と顕色剤の分散性を高めることで、感熱紙の性能を支えています。
感熱紙の顕色剤の分散剤・バインダーとしてのPVOHは、以下のような特性を持っています。

均一な分散: PVOHの優れた分散性により、顕色剤が均一に分散し、感熱紙全体にわたって均一な色発現が可能になります。

分散液の安定性: PVOHは、分散させたロイコ染料や顕色剤の分散安定性を向上させるために使用されます。

バインダー力: PVOHの優れたバインダー力により、顕色剤が感熱紙にしっかりと固定され、色発現が確実に行われます。

 

分散性の高いポリビニールアルコール(PVOH)とは

三菱ケミカルの特殊変性PVOH GOHSENX™Lシリーズは汎用PVOHと比較して分散安定性」「小粒子化低粘度化」といった特性に優れており、感熱紙の顕色剤に適したポリビニルアルコールです。

GOHSENX™Lは、三菱ケミカルが提供する特殊変性PVOHで、分子内にスルホン酸基を有するアニオン性のポリマーです。以下に、GOHSENX™Lの分散性について詳しく説明します。

GOHSENX™ Lは、粒子表面に吸着すると、アニオン基の電荷反発により、有機および無機材料の分散に優れた特性を発揮し、特に、染料や感熱紙の顕色剤において下記し示す優れた分散性を発現します。

 

分散粒子径の安定化: 染料や顕色剤は、微細に分散されると、分子同士の相互作用により、分散粒子の再凝集が起こすため、分散粒子径が不安定になります。アニオン基による電荷反発により、再凝集を抑え、分散粒子径が安定化し、均一な分散液が得られます。

小粒子化:従来PVOHでは凝集抑制効果を発現するために、添加量を増やす必要がありましたが、GOHSENX™Lは高い凝集抑制効果により、少ない添加量で微細な粒子径に調整することができます。

低粘度化:粒子間の相互作用を低減することができる分散液の粘度を低下させることができ、分散液の低粘度化も可能となります。

GOHSENX™Lは、従来のPVOHでは難しかった顕色剤の分散や、分散液の高固形分化が可能となり、分散液の品質、生産効率の向上、塗工効率に貢献します。

 

フェノールフリー顕色剤の需要の高まり

近年、感熱紙の顕色剤において、フェノールフリー製品が注目されています。従来の感熱紙には、ビスフェノールA(BPA)やビスフェノールS(BPS)などのフェノール系化合物が使用されてきましたが、これらの化合物は人体や環境への影響が懸念されています。そのため、多くの企業がフェノールフリーの顕色剤を開発し、感熱紙の安全性を向上させる取り組みを進めています。

フェノールフリー顕色剤の利点

安全性の向上: フェノールフリーの顕色剤は、人体や環境への影響が少ないため、より安全な製品を提供することができます。これにより、消費者や作業者の健康リスクを低減できます。

規制対応: 多くの国や地域でフェノール系化合物の使用が規制されているため、フェノールフリーの顕色剤を使用することで、法規制に対応した製品を提供することができます

 

フェノールフリーの感熱紙に適した分散剤を選ぶことの重要性

米国のワシントン州では感熱紙を含む特定の消費者製品にビスフェノールA(BPA)やビスフェノールS(BPS)を含むビスフェノール類の使用を禁止する法律を可決しました。これにより2026年1月以降はフェノールフリーの感熱紙のみ流通可能となります。
この動きは、フェノールフリー製品への需要をさらに加速させていくと推測されます。

GOHSENX™L社内評価においてフェノールフリー顕色剤に対する優れた分散性が確認されており、この分野でも高い適応性を示しています。そのため、安全性と性能の両立が求められるフェノールフリーの感熱紙に最適な分散剤です。

 

GOHSENX™Lはフェノールフリーの感熱紙にも最適な分散剤

ポリビニルアルコール(PVOH)の分散性は、感熱紙の顕色剤分散にとって重要な役割を果たします。
三菱ケミカルの特殊変性PVOH GOHSENX™Lシリーズ優れた分散性、高い乳化力、接着性、安定性を持ち、さまざまな産業用途で多数の採用実績がございます。

さらに、フェノールフリーの顕色剤は、感熱紙の安全性を向上させるための重要なトレンドです。これにより、人体や環境への影響を軽減し、持続可能な製品開発が進められています。GOHSENX™Lは、フェノールフリー顕色剤の効果的な分散を可能にすることで、安全性と持続可能性を兼ね備えた感熱紙の実現に貢献します。

変性ポリビニルアルコールGOHSENX™についてはこちらのページをご覧ください。
GOHSENX™L(アニオン性PVOH L)シリーズについてはこちらをご覧ください。

 

製品カタログ

ゴーセネックス™のご紹介
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