感熱紙の発色層コートに活用されるPVOHの特性
感熱紙とは、一定以上の温度になると化学反応が起こる発色剤を塗布した紙のことです。この記事では、感熱紙の概要や種類、熱によって印字される仕組みなどについて解説しています。また、感熱紙の印字性能を向上させるために、感熱染料の分散剤として使用できる合成樹脂の「ゴーセネックス™ L」についても紹介しています。
レシート(感熱紙)に使われているPVOH
日常のお買い物でレシートやバーコードなどをよく見かけるのではないでしょうか。これらは、感熱紙と呼ばれる機能性をもたせた紙になります。
感熱紙は、一定の温度以上の熱を与えると化学反応を起こす色素が紙に塗布され、感熱紙用のプリンタで、発色させたい部分に熱を与えると発色色素が黒色に発色する仕組みになっています。
感熱紙の利用は、印刷速度が非常に速く、インクやトナーを必要としない、さらに感熱紙用のプリンタが小型化、軽量化でき、ランニングコストも低いことから、レシート以外にも、物流用バーコードラベル、航空券、宝くじ、医療用のラベルなどの幅広い用途で使用されています。
PVOH(ポリビニルアルコール)は実は、身近にある感熱紙にも使われています
感熱紙とは
感熱紙の構成
各層の役割を説明します。
- オーバーコート層:光、水、アルコールなどから守り耐久性を上げる役割
- 発色層:熱が加わるとロイコ染料と顕色剤が反応し、黒く発色する役割
- アンダーコート層:紙の凹凸を平滑にする役割・断熱性を持たせ熱応答性を高める役割
- 基材:支持体で紙材料が用いられる
- バックコート層:紙のカール防止や、薬品が紙の裏面から浸透することを防止する役割
感熱紙が発色する仕組み
感熱紙用のプリンタの加熱部である感熱ヘッドが、感熱紙の表面に熱を与えることで、発色層に微分散されているロイコ染料と顕色剤が溶融・接触して、化学反応が起こり、印字や図形などが黒色に発色します。
それら発色剤については、以下の通りです。
- ロイコ色素:感熱染料です。主にODB2が用いられる。
- 顕色剤:酸性の化合物です。フェノール系化合物(主にBPA)が用いられている。
ロイコ染料の発色機構
発色層に使われるPVOHの2つの役割
PVOHの2つの役割があります。1つ目は、発色層のロイコ染料、顕色剤の分散剤としての役割、2つ目は、分散されたロイコ染料や顕色剤のバインダーとして用いられています。
分散剤としての役割
感熱紙記録紙は、速やかに発色させることや、印字の解像度をよくするためには、発色層のロイコ染料、顕色剤を微粒子化することが求められています。
粒子サイズが一定以上小さくなると粒子同士が再凝集し、分散粒子の分散性が不安定になる課題があり、PVOHを分散剤として用いると、分散されたロイコ染料や顕色剤の粒子の周りにPVOHが吸着し、保護コロイドとして機能し、分散粒子同士の再凝集を抑制し、分散液の安定性を高めることができます。
バインダーとしての役割
PVOH(ポリビニルアルコール)を用いると発色層に分散しているロイコ染料や、顕色剤を結着させる役割や、基材と発色層を接着させるための役割があります。
分散性に悩まれている方は、ゴーセネックス™ Lをご検討ください
欧州では、ビスフェノール系顕色剤BPAの使用が2020年に人への健康や環境へリスクを有することから、感熱紙用途への使用が禁止されました。
代わりに安全性が高い顕色剤(その他のフェノール系顕色剤やノンフェノール系顕色剤)への切り替えが進んでいるが、BPAよりも分散させることが難しい材料になってきており、これまでに使用されていたPVOH(ポリビニルアルコール)では、分散性能が低いことに課題があります。
三菱ケミカル株式会社では、分子内に強アニオン基を有する特殊変性PVOH(ポリビニルアルコール)のGOHSENX ™ Lをご提供しています。分散粒子の周りに吸着されると、強アニオン基の優れた電荷反発性を活かし、粒子の再凝集を抑制することができ、分散性を高めることができます。
一般のポリビニルアルコールよりも高い分散性を求めている方、また特殊な顕色剤の分散性にお困りの方は、ゴーセネックス ™ Lをご検討ください。